実家に帰省している。
ぼくは友達がいないので、実家に帰ってもやることがなく、ひたすら横になっている。涅槃像の如く。
それはそれでいいものだ。大学から実家を飛び出して一人で過ごしていたため、家族とゆっくりと過ごす時間をとるのも、素晴らしい過ごし方だろう。
問題は、姉と母が旅行に行っており、父親に至っては死んでいるため、実家にぼくしかいないことだ。
帰省してまた実家で一人暮らしをするとは思わなかった。
話は変わるが、ぼくの実家の食生活は少しバグっている。主にぼくの強烈な偏食のせいである。母にはずいぶん苦労をかけた。
結果として、我が家の冷蔵庫には水やお茶といったベーシックドリンクは在庫しておらず、代わりに2リットルコカコーラが2本、スプライト1本、無糖のコーヒーが3本という漆黒かつアメリカンなラインナップとなっている。もちろん、ポテチも4袋くらい常備在庫している。
ぼくは実家で飲むコカコーラが、一番美味しく感じる。
ソファに腰掛けて、静かな空間(ぼく以外の生者は旅行中だから)でたくさんの氷が入ったグラスをカランと弾ませ、ゆっくり口にするコカコーラは格別だ。
一人暮らしの小さな部屋でカチカチの座椅子で飲むコカコーラとは、違う。
ぼくはこのコカコーラを飲むために実家に帰省していると行っても過言ではない…。
いや、過言だ。家族に会いに来た。
家族に会いに来たのになぜいない。
なぜ旅行に行った。
ぼくも連れて行け。
ふざけるな。