ケーキ屋さんでバイトをしていた。
当時、ぼくは16歳。
自転車で30分かけて公立のアホ高校へ通い、部活にも入らず、彼女もできず、家で「もなちゃと」や「ふみコミュ」といったチャットサービスでチャットH(チャット上で文章だけで行うSEX)にハマり切っていた。
そんな私を見る母親の目は、だんだんと厳しくなり、夏休み前にはとうとう「ネットばかりするのであれば必要ないでしょう?」という理由から「おこづかいを無くす」という法案が提出され、可決に至った。
私自身、思い描いていた青春ライフと違いすぎている事に気づき、これではいけないと思い立つ。
もなちゃとをログアウトし、バイト先を探し始めた。
バイト探し
タウンワークに乗っている仕事は飲食店が主だった。
ラーメン屋や居酒屋といったバイトは、絶対に嫌だった。
なぜなら、ぼくは声が小さい。
声の小さいぼくはバイト先を決めきれずにいた。
焦りが生じる。僕のサイフから野口英雄が家出して1か月は経過した。
そんなさなか、下校中にケーキ屋へ立ち寄った。
ぼくは無類の甘党だから、ちょこちょこケーキ屋へ行くのだ。
そのお店はぼくの好きなナッツ系のケーキがおいしく、大変気に入っていた。
そのケーキ屋さんのレジ下に「アルバイト募集中」の張り紙が貼られていた。
「これはチャンス」と思った。
ここでバイトすれば毎日ケーキが食べれるし、大きい声も出さなくてよさそうだ。
即決でバイト先を決めた。
人手不足だったみたいで、面接もパパっと通過できた。
ぼくのウキウキスイーツライフが始まる。
そう信じていた。
誤算
失敗だった。
なにもかもが失敗だった。
失敗を下記に羅列する
①店長がめっちゃ怖い
ケーキ屋さんを立ち上げる男性なんて、みんなジャムおじさんみたいなまったりぼんやりしたおじいさんだろうと思っていた。
違った。
ゴリゴリだった。
金髪を短く切って、小中高柔道部だった30歳前後の男性が店長だった。
めちゃくちゃ怖かった。
「きみくらいの背格好だったら、背負い投げでぶん投げて、一瞬で締め落とせるだろうね。」とよく言っていた。
返事が小さくてめっちゃ怒られる。
大きい声はどの職場でも必要なのだ、と学んだ。
②ケーキもらえない
売れ残ったケーキは食中毒を防ぐためにすぐ捨てるらしい。
ケーキがもらえない。
ケーキ食べたい。
美味しそうなケーキをひたすら箱に詰めるしかない。
目の前にケーキがあるのに、ちょっとでも食べたらキレられる。
一度マカロンをつまみ食いしている所を見られて殺されかけた。
ちくしょう。
働いている意味がない。
③自分がめっちゃ不器用だった。
自分はハチャメチャに不器用だった。
ゴリラのほうが幾分か器用だと思う。
ケーキの箱を組み立てるのに毎回5分くらいかかるので、お客さんを待たせまくる。
リボン飾りが作れないので、仕上げが出来ない。
字が汚すぎるので「バースデイカード」が書けない。
単純にレジが出来ない。
焦りすぎて手が滑り、ケーキに手刀をかましてしまう。
向いてなさすぎる。
そんなケーキ屋さんのバイトでしたが
ホールケーキに4回目の手刀をかましたところを店長に見られ
きちんとクビを宣告されました。
本当にありがとうございました。
生きるのムッズい。