運転中、前の車が単独で壁にぶつかる。
半壊していたが、助けようと自分の車を停めて駆け寄る。
すると場面が変わり、なぜか自分が単独事故を起こしたことになっていた。
証拠に、両手の指がバキバキに折れていた。
なぜ?目の前で確かに他の人が事故していたのに。そう狼狽えながら、会社に一応事故報告の連絡をする。
自分が起こした事故は、キャスムという名前も知らない会社の壁にぶつかっており、キャスムは損害賠償と、私がキャスムで働くことを求めてきた。
キャスムは家や建物の解体前にバスやネジなどの金具を外していくというニッチな会社だった。
私は見に覚えのない事故で謎の会社に転職をした。
キャスムで働いている時、一本の電話がかかってきた。
前の職場の上司だ。
「事故の件、よかったな。先方が優しい人で。仕事すれば許してもらえるんだからラッキーだよ。」
その電話に違和感を感じた。なぜ、事故が原因で辞めた職場の上司から励ましの電話がかかってくるんだ?そもそもぜんぜん優しい処置ではないだろう。
これはおかしい。
そうか。これは夢だ!と気づいた。
しかし、目を覚ます方法がわからない。
本当にこれは夢なのか。現実かもしれないという狭間に吸い込まれた。
とにかく事故現場を見ればはっきりするかもしれない!
とキャスムを飛び出した。
これが夢ならば折れている両手の指が治るはずだ。治れ、治れと外を走りながら念じるとみるみる動かなくなった中指が治った。
やった!これは夢で決まりだ!と確信した途端、世界がバグり始めた。
オブジェクトの一部が透明化し始めたのだ。実体はあるのに透明で見えない、昔のゲームみたいなバグり方。
階段は段がなく、坂みたいになっている。
渡り廊下は、壁がなく外が見える。
恐ろしい世界になっても夢から出れない。
透明の電柱にぶつかりながらも、死にものぐるいで事故現場へ向かった。なぜか事故の現場を見れば必ず夢から出られると確信していた。
あの角を右に曲がれば事故現場だ!
急いで角を曲がった。
すると目が覚めた。車の運転席の座席を倒した状態で寝ていたようだ。
心底ホッとした。
朝方寝始めたのだが、外は真っ暗。
社用車を路肩に停めて、仮眠を取っていたのだ。
今、何時だ?
すると一人の警察官が社用車の窓を叩いた。
「お兄さん、6時間も車を停めてたらダメだよ。悪いけど駐禁とるね。」
なんてことだ。 そんなに寝ていたのか。色々と約束していたのに…。
しょうがないかな、と思いつつ耳に違和感を感じたので右耳に小指を突っ込み、ほじった。
すると耳から大量の耳垢と、渦巻き状の何かが指についてきた。
その瞬間、右耳が聞こえなくなった。
警察官が言う
「あー、お兄さん。それ鼓膜だよ。残念だね。」
ドライに言われた。
なぜか鼓膜を自ら取ってしまったようだ。
泣きそうになりながら耳を治そうと耳に再度鼓膜と言われた何かを入れようとしたり、オロオロとする。
するとそれを見ていた警察官が笑いながら言った。
「よかったね、お兄さん。これも夢で。」
その瞬間、いつものベッドの上で飛び起きた。
ここは、夢の中じゃないですよね?