歯医者に来た。
左下の銀歯となっている奥歯が、内部から浸食されているとのことだった。
獅子身中の虫とは、このことか。
おそらく、このことではない。
治療Start
医師から説明を受ける。
既存のかぶせ物を引っぺがして、とにかく虫歯を削りまくるとのことだった。
かなりの大手術なのでは?
「神経無いから麻酔なしで行きますね~」
ここにきて4つの歯を治療したが、この医師が麻酔を使っている場面にいまだかつて遭遇したことがない。
もしかして、麻酔が苦手なのか?
一抹の不安を覚えるが、治療はスムーズにいった。
かぶせ物を外した際、医師が放った「ありゃぁ…。」という声が不安にさせたが、着々と進んだ。
「いったん口ゆすいでくださ~い。」
口をゆすぐ、赤黒い液体を吐き出す。すんごい血が出てる。
下で治療された左奥歯を確認。
うん、ない。
更地だ。
かろうじて根っこっぽいところはあるけど、ほぼゴルフ場のようなまっさらな地形だ。
「いやぁ~!この歯はラストチャンスですね!ギリッギリ差し歯使わずにいきましょう!」
医師のテンションが上がっている。
俺の奥歯は知らない間に佳境を迎えていたようだ。
「じゃあ、また来週もがんばっていきましょうね!」
…ん?
あれ、奥歯は?
完全なる更地のままですよ?
凹←こうなってるよ?
あれれ?仮で詰め物とかは…?
と、戸惑っているうちにエプロンを外され、待合室へほっぽりだされる。
ははぁ、今回は型を取って、来週作った仮の歯を入れるのかな?
まあ、一週間くらいの我慢だ。とあきらめた。
しばしの奥歯との別れ。
受付のお姉さんより宣告
お会計を支払い、次の診療日を希望する。
同じ時間帯だと再来週になるとのことだった。
さすがに2週間歯がないのは嫌ですね~。と告げる。
「あ、2週間というか、奥歯はずっとないですよ?」
えっ。
ぼく、奥歯、ずっとないんですか!?!?
衝撃の事実になぜか爆笑してしまった。
受付のお姉さんは慌てたように言う
「神経の治療してからなので…。ずっとというか…まあ、数か月は…。だからしばらくガムとか食べちゃダメですね。」
そっかぁ。永遠じゃないのか。よかったぁ。
ってならないよ!!!!!!!!!!
ガム喰えないの!?!?!?数か月!?
かなりショックを受けた。
突然奥歯とお別れになってしまった。
ずっと付き合ってた彼女が急に外国へ転勤になってしまったかのような衝撃。
虚無感。
爆笑しながら家に帰って、泣きながら味噌煮込みうどんを啜った。
かつて奥歯があった場所に、ダイレクトにうどんの熱を感じる。
だれか奥歯ください。