灯台下暗しレビュー:ガス
ぬくもり度:☆☆☆☆☆
必需度:☆☆☆☆☆☆
電気で炒めるより炒め物がおいしそうだよね度:☆☆☆☆
総評
ガス。すごいです。
正式に言えば、液化石油ガス。
プロパンとかいう謎の奴をギュッッとやったら液状になったよ~ってガスです。
「ようし!プロパンをギュッとやってみて液状にしてみようかな!?」
なんて考えるやつ、いる?
いました?
いたとしても、いじめられてたでしょ?授業中に隣でプロパンをギュッとしてたらいじめるでしょ。
そいつが大切にしているプロパンに、勝手にヒドロキシ基突っ込んでプロパノールとかにしちゃうでしょ。
でも、そいつはめげない。永遠にギュッとしてる。プロパン。
なんだか憎めないやつだ。プロパンガス作ったやつ。
そんなことはいいとして、マジでガスはいい。
無いと死ぬ。超死ぬ。
朝シャワー浴びようと思って、水だったことある?
ぼくはあるよ。ガス代滞納しすぎたから。
さっっっぶい朝に、温水だと思って、極冷えウォーター喰らってみ?心臓出るよ。
冗談じゃなく、ちょっと口から大静脈的なもの見えたもんね。
このときほど、ガスが、ぬくもりが、人間には必要なんだと感じた瞬間はなかった。
私はおろかだった。
ただ、それに気づくには、遅すぎた。
ガスは、愚かな私を突き刺すような冷たい瞳で一瞥し、軽やかな足取りで私の部屋を後にした。
ガスはもう、帰ってこないだろう。
ずっと一緒に過ごしていたガスとの別れは、あまりに唐突で、簡素だった。
私は全裸で凍えながら、ガスと思い出を共にした遺品を見つめた。
もう動かない、給湯器。
チチチチチという音だけを奏でる楽器と化した、ガスコンロ。
湯を忘れたシャワー。
文明を当たり前のように享受している私たち人間は、ひとたび文明を奪われると、何もできない豚に成り下がる。
私はブヒブヒ言いながら、先輩にお金を借りて、なんとか文明を取り戻した。
もう、ガスを決して離しはしない。
私はそう誓い、ガス料金の請求書を窓から投げ捨てた。