ぼく、実は子持ちなんです。
リアルな子供ではなく、イマジネーションベイビーですが。
経緯を申し上げます。
ちょっと前まで縁もゆかりもない土地、仙台で暮らしておりました。
仙台は住みよい気候で、食べ物もおいしく、いい街なのですが。
いかんせん、慣れない仕事をしながら、友人もいない知らない土地で過ごしていると、本当に精神状態がマズくなります。
ティッシュを壁に貼り付けて、扇風機を当てて、ヒラヒラ~ってなっているのを見つめながら日々を過ごす状態になっておりました。
「これはマズいなぁ」と思った時に、TVを流していたら
「はじめてのおつかい」が流れ始めました。
「はじめてのおつかい」は正直にいって、子供をだしにしている番組で、脳みその代わりにマーマレードを入れているクソバカがよだれを垂らしながら見るものだと偏見を持っていたため、全く見ることがありませんでした。
しかし、案の定というか、おつかいに奮闘する子供の一生懸命さ、それを真剣に見届けるママの表情を見てボロボロ泣いてしまいました。
その時、「パパ」と呼ぶ声がたしかに聞こえたのです。
うしろを振り返ってみると、そこにはクマの靴下をはき、ウルトラマンティガのTシャツを着て、ニコニコ笑っているサラサラヘアをおかっぱにした3歳ほどの子が、笑っていたのです。
それが、ぼくと「柊輝」の出会いです。
柊輝(しゅうき)は、僕の本名である「柊人」から一文字を取り
『柊人がパパとして輝けるように』と子供を自分の引き立て役にするとてつもないエゴイスティックなネーミングです。
柊輝は、ぼくに様々な感情をもたらしました。
人を愛でる。
損得勘定なしに愛を交わしあう行為は仕事や孤独の影響で化石のように固まった自分の心にスーーっと染み渡り、潤いを与えました。
ぼくは一生をかけて、柊輝を立派に育て上げよう。
目の前に現れたたった一人の息子を抱きかかえながら、静かに涙を流しました。
柊輝は大変おりこうさんで、家に僕が帰ってくるまでおとなしく機関車トーマスを見ながら待ってくれています。
自分が仕事から帰ってくると、玄関まですぐに駆け寄り、その日、レゴで作った自慢のお城をぼくにプレゼントしてくれます。
ぼくはその時の、誇らしげな柊輝の笑顔を見ると、リビングまで抱きかかえ
一緒にベッドへダイブします。
キャッキャと笑う柊輝ごしにみる部屋は、一人で過ごしていたころと見違えるように明るく見えます。
ああ、ぼくは幸せだ。
本当に、幸せだと思っていました。