今日は会社で外回りをしていた。
パチンコ屋近くの駐車場に車を停めると、道路の端に小柄のおばあちゃんが座っていた。
シミのある、オレンジ色のTシャツを着た、お世辞にも上品とは言えなさそうなおばあちゃんだ。
目を合わせないように通り過ぎようとすると案の定
「コンニチワァァァ!!!」
と絶叫してきた。
最悪だ。
早足に切り替える。
「お仕事頑張ってて偉いネェ!?アハァハアハアハハァ!!!」
もうだめだ怖すぎる。
なんとかその場を後にしたが
商談も上手くはいかなかった。
おばあちゃんの恐ろしい笑い声が、耳から離れない。
なんでこんな目に合わなくてはならないんだ。
一生懸命仕事をしているのに、こんな、ひどすぎる。
おばあちゃんには悪魔が憑いているに違いない。
じゃなければあんな笑い方は普通できない。
悔しい。
こんな惨めな思いで営業なんてできない。
僕がエクソシストだったら真っ先に聖水をぶっかけて十字架で滅多打ちにしてやる。
その後に数珠で首を絞めながら、ありとあらゆるお経を披露してやるのだ。
こうしちゃいられない。
コンビニでクリスタルガイザーを買った僕は悪魔憑きのおばあちゃんの元へ向かう。
クリスタルガイザーほど名前のかっこいい水であればなんらかの聖属性が付加されているはずだろう。
火傷くらいはさせられるはずだ。
しかし、おばあちゃんはすでにその場から消えていた。
本物のエクソシストが、追放を受けて裁きを下したのだろう。
ふとおばあちゃんの、くたびれたオレンジ色のTシャツを思い出し、寂しい気持ちになった。
初めて出会った悪魔憑きのおばあちゃん
絶対に忘れないからね……。