母の日だった。
華を送ったりするそうだが、わたしはなにもしなかった。
カーネーションもくそも見て見ぬふりをした。
それもそうだ。母さんにプレゼントを送って喜ばれたためしはない。
幼少期、カーネーションを買って送ってみたが、「ありがとう~」と母さんが笑顔で受け取ったと思ったらリビングの机に横にした。
私が確認したかぎり、その机の上に横たわった私のカーネーションは3日ほどで緩やかに老いていった。
「飾ったりしないのかなぁ・・・?」と幼いながらも不安に思ったものだ。
それとも母の地元では花は横たわらせて楽しむものなのだろうか?いまでも疑問である。
ごく最近でいえばイブサンローランとやらの口紅を送ったことがある。
これは大学4年生の時に贈った。当時びっくりするくらい金が無い私であったが、なぜか就活を経て気持ちが高ぶったのか鼻息を荒くして名古屋駅の高島屋で口紅を買ったのだった。
「これはさすがに喜ぶろうなぁ・・・。」
そう21歳の私は思っていた。
しかし母さんは過去の母の日を同じように「ありがとう~」と間延びした感謝のひとかけらもない発声方法を披露した後、そっと引き出しの奥の方にしまっていた。
そして、それを開封した気配は1年経った今でも見て取れない。
もう母さんに贈り物はあきらめたのだった。
しかし、初めて母親から先日おねだりをしてもらった
「クレイジージャーニー」というTV番組のdvdだった。
信江(母の名前)よ、お前のほしいものはそこだったのか。
早く教えてくれよ。
ちくしょう。
おねだりを受けたその日にアマゾンでクレイジージャーニーのdvdをポチったことは言うまでもない。